現役人事コンサルの教える「今いる会社で年収を増やす具体的な方法(業種・職種別)」が面白かった。【書評】
かのアルバート・アインシュタイン先生の言葉に以下のような至言がある。
ゲームのルールを知ることが大事だ。
そしてルールを学んだあとは、
誰よりも上手にプレーするだけだ。
そして今回読んだ『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』は、会社員ならば全員が強制的にプレイヤーとなる「昇進・昇給」というゲームの「ルール」と「上手な(=昇進昇給につながる)プレー」と「上手にプレーする方法」が書かれた攻略本だ。社会人なら手元においておきたい一冊と言える。
もともとは『ワンランク上をめざすビジネスパーソンの独習ガイド』で「業界別・職種別の人事制度の違いやそれに伴う組織風土の違いの説明が大変面白く一読に値する」のような紹介をされていたのが手にとったきっかけだ。
おすすめできる人
- 正社員で自分の給与を増やす具体的な方法が知りたい人(現在年収300万以上でも)
- 今いる会社の昇進・昇給システムがどんなロジックで成り立ってるか知りたい人
- 転職先に異業種を考えている人
- 各業界の人事制度の違いや組織風土の違いに興味が有る人
まとめ
いったい「できる人」とはなんなのだろうか。時間に正確な人?周囲に気を配れる人?ホウレンソウがしっかりしている人?
筆者はこの本の中でごくシンプルに「できる人=昇進する人」と定義してくれる。
「だから、まずは昇進するための戦略を立てましょう」、と。「あなたの業界では、業種では何が評価されるのか教えます」と。評価のチェックシートを作っていた人が言うのだから間違いない。「すぐにあなたもできる人になる!5つの〜」とかそういう本にのってる瑣末なテクニックを盲目的にこなす前に、一度この本を読むことをおすすめする。
それにしてもこの「うっかりー」ももっとキャッチーなゲスいタイトル(例えば「現役大手企業最終面接官が教える最終面接を突破する方法!」みたいな)にも出来たような気がしたのだが、読んだ後では、筆者が嫌がったのではないかと感じる。
そんぐらい、本書の語り口は丁寧かつ分かり易い。
実践的な攻略本でありながら、知的好奇心を満たす新書としても読める良書であった。
書いたのはこんな人
ヒューマン・リソース・アーキテクト 平康慶浩
(企業の根幹となる、人と組織の枠組みの設計者)
『日本の人事のロジックを一番よく知るコンサルタント』と評されている。
アクセンチュア、アーサーアンダーセン、日本総合研究所を経て独立。
いままで大企業、中小企業、公的機関など120社以上の人事制度の改革や設計を行ってきたらしく、これはルールを作る側が書いた良質のネタバレ本との見方もできる。
こんなことが書かれてる
この本に書いた内容は、要領よく立ち回れば給与を増やせる、というものではない。項目によってはずいぶんと努力しなければいけないものもある。だから適当に大事なところだけ頑張ろうと言いたいわけではない。目の前の仕事を黙々とこなし真面目に頑張っている君が、生活的にもう少し余裕を持つために、その真面目さをどこに振り分けたほうが良いかを示すものだ。(「おわりに」より)
まず「なぜ君の給与はあがらないのか?」ということを「レンジレート」「高齢化社会」「転職市場の拡大」をキーワードに構造的要因から分かりやすく説明してくれる。
いよいよ「じゃあそんな社会で給与を上げるにはどうしたらいいのか?」を第二章から説明してくれるわけなのだが、まず企業を
- 普通の企業
- ブラック型企業
- 業績悪化型企業
- 二重苦企業
の4パターンに分けるのが特徴的。これは用意された10個の質問にYES/NOで答えることで簡単に分類出来る。「33%以上を出資している親会社がある」「顔見知りの20代社員が去年一年で二人以上転職して会社を辞めた」など筆者の経験から導かれた具体的な質問が並び面白い。
そして各企業タイプ別の給与を増やす「基本ルール」を説明した後、この本のメインディッシュ「業種別の給与の増やし方」「職種別の給与の増やし方」に進んでいく。
業種別で語られるのは、
- 製造業
- 建設業
- 運輸業
- 小売・飲食業
- 医療・福祉関連業
職種別には
- 事務職
- 営業職
- 専門職
と並ぶ。ぴったりと自分の業種に当てはまるものが見つかったならそこだけ読めばよいし、私のように各業界の人事制度の違いや組織風土の違いに興味が有るのなら、全てに目を通せば良い。
ルールを設計してきた筆者が筆を執っただけあって、語られるルールも戦略も作戦もどれもこれも非常に具体的で、全項目とても興味深く読ませてもらった。
さて、甘酒を飲もう。